文庫情報としては、ISBN978-4-7584-3365-5 ハルキ文庫(時代小説文庫) 2008年8月18日発行となります。
最近、山本周五郎氏の作品を読むのは久々ですが、なかなか面白かった。
この雨上がるは「深川安楽亭」「よじょう」「義理なさけ」「雨あがる」「雪の上の霜」の五編からなるオリジナル短編集です。いくつか前にも読んだものだが、久々であるため新鮮な感覚で読めた。
最初の深川安楽亭は解るのだが、どうも全体的に薄暗く淀んだ湿っぽさが続きあまり好きではない。(山本周五郎氏の作品の中でも異色のようだ)
義理なさけはむしろ作者らしい感じがあり安心できる。
これは武家の家(八百石の御納戸奉行役)での身分を越えた恋愛小説というようなもので、小間使いのしず江と嫡子の中山甲子雄の話だ。
それと同時に、甲子雄の母八重としず江との女性同士の義理と言うのか人情というのか、その辺にも作者の意図があるように思う。(やはり女性は立派と言うのか、私は個人的には甲子雄のような純粋で真っ直ぐさが好きだが)
次の「よじょう」は宮本武蔵を父親の敵とねらう仇討ち話だ。
もっとも本人はその気はないのだろうが、周りの人々が勝手に思いこんでしまう。
主人公の岩太は侍の家(父親は武蔵に斬られた)の次男として生まれ、料理人になりたいのに、それも許されずしまいには川原でこじきとなる。(この様子を周りの人々が勝手に仇討ちと決め込んでしまう)
武蔵は登城の行き帰りに岩太の住む川原の前で全身を緊張させ達人のみごとな構えをする。剣術など何も知らない岩太を相手に。
そして、一度も立ち会わずに武蔵は亡くなってしまう。(岩太は小屋の中を腹を抱えて転げ回る)
どうも作者には作られた武蔵像に対する反感があるようだ。逸話とはそのようなものかも知れないが、武蔵ファンとしては少し面白くない。
「雨あがる」と「雪の上の霜」は三沢伊兵衛を主人公とする二作品だ。雨あがるは映画にもなった作品なのでご存じの方は多いと思う。
侍としてよりも貧しくも心優しい一人の人間として生きる三沢伊兵衛やそれを理解し尽くしていく妻のおたよの姿はじつに感動ものだ。(もう何もいえねぇ)
読後のすがすがしさときたら100点満点だ。(もう何もいえねぇ)
山本周五郎氏のこの手の作品は実にいい。
また読みたくなってしまうものだろう。
それでは、また




